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電子書籍はAI翻訳の夢を見るか?


★ そのまんま
 へへへ。
 出オチ、です。
 思いついたこのタイトルが使えただけで、もう満足。

 

 初めて電子版で書籍を買ってからまだ1年も経ってないけど、その便利さに恋してしまった。
 ついこの間まで紙派だった人間からすれば、「紙の手触りが」「装丁が」「書棚に並んだ背中が」「大きな図書館で本を読む際、傍らの少し暗い書庫に眠る巨大な『知』の質量感や空気や積み重ねられた時間の厚みが」って、いや、わかります。じゅーぶんにわかります……けど、ね。

 

 たしかに、端末がないと読めない、古本屋が使えない、友人に貸しづらい、資料として複数冊を並べて読むのがちょっと難しい、といったデメリットもあるが、今となってはメリットのほうが大きいように思える。
 欲しいと思ったら時間を気にせずいつでも買って読めるし、在庫切れもなく、割引キャンペーンだってある。
 場所を取らないから数百冊だって楽々持ち歩けるし、本棚を掘り返さなくても検索すればすぐに見つけられる。
 スマホタブレットなら電気を消した就寝前の布団の中でも読めるし、寝落ちしたって大丈夫。
 よくわからない言葉があってもそのままコピーしてグーグル先生に聞けば音楽や映像資料だって確認できる。
 小さすぎる文字だって拡大できるし、読み上げ……はまだ必要ないかな。
 自分としては、ほぼ良いことづくめ。
 そして今後に期待したいのが、タイトルにあげた「AI翻訳」だ。

 

★ 無料翻訳サービス
 とりあえず、現時点でも少しはできている。
「DRMのないもの」という条件付きとなるが、プレーンなテキストとして無料の翻訳サービスにかけてみることができる。
 実際に、小説がどんなふうに翻訳されるか、以下の例で試してみた。
 文庫本にして2ページ足らずの文章だが、比較のため長くなってしまうのでご容赦いただきたい。

 

原文
「UP THE LINE」( 著:Robert Silverberg、1969年刊)
1
Sam the guru was a black man, and his people up the line had been slaves—and before that, kings. I wondered about mine. Generations of sweaty peasants, dying weary? Or conspirators, rebels, great seducers, swordsmen, thieves, traitors, pimps, dukes, scholars, failed priests, trans­lators from the Gheg and the Tosk, courtesans, dealers in used ivories, short-order cooks, butlers, stockbrokers, coin-trimmers? All those people I had never known and would never be, whose blood and lymph and genes I carry—I wanted to know them. I couldn’t bear the thought of being separated from my own past. I hungered to drag my past about with me like a hump on my back, dipping into it when the dry seasons came.
“Ride the time-winds, then,” said Sam the guru.
I listened to him. That was how I got into the time-traveling business.
Now I have been up the line. I have seen those who wait for me in the millennia gone by. My past hugs me as a hump.
Pulcheria!
Great-great-multi-great-grandmother!
If we had never met—
If I had stayed out of the shop of sweets and spices—
If dark eyes and olive skin and high breasts had meant nothing to me, Pulcheria—
My love. My lustful ancestress. You ache me in my dreams. You sing to me from up the line. (ディックじゃなくてゴメン。)

 

Google 翻訳
1
第一人者のサムは黒人で、彼の部下は奴隷であり、それ以前は王でした。 私は私のことを疑問に思いました。 何世代にもわたる汗まみれの農民、疲れ果てて死ぬ? または、共謀者、反逆者、偉大な誘惑者、剣士、泥棒、裏切り者、売春斡旋業者、公爵、学者、失敗した司祭、ゲグとトスクの翻訳者、娼婦、中古の象牙の商人、短期の料理人、執事、株式仲買人、コイントリマー ? 私が知ることのなかった、そして決して知ることのなかった、私が血とリンパと遺伝子を持っているすべての人々-私はそれらを知りたかった. 自分の過去から切り離されるという考えに耐えられませんでした。 乾季が来ると、過去を背中のこぶのように引きずり込み、その中に浸りたいと切望しました。
「では、時の風に乗ってください」と教祖のサムは言いました。
私は彼の話を聞いた。 それが私がタイムトラベルビジネスに参入した方法です。
今、私は順調に進んでいます。 何千年もの間、私を待っている人々を見てきました。 私の過去はこぶのように私を抱きしめます。
プルケリア!
ひいひいひいおばあちゃん!
もし私たちが会ったことがなかったら—
もしお菓子やスパイスの店に行かなかったら――
黒い瞳とオリーブ色の肌と大きな胸が私にとって何の意味もなかったとしたら、プルケリア—
私の愛。 私の好色な祖先。 あなたは私の夢の中で私を痛めます。 あなたは列の上から私に歌ってくれます。

 

DeepL翻訳
1
教祖サムは黒人で、彼の家系は奴隷であり、その前は王だった。私は不思議に思った。汗まみれの農民が何世代も続いて、疲れ果てて死んでいくのか?あるいは陰謀家、反逆者、偉大な誘惑者、剣士、泥棒、裏切り者、ポン引き、公爵、学者、落ち目の神父、ゲグとトスクの翻訳家、花魁、中古象牙商、下働きの料理人、執事、株屋、コイントリミング屋などだろうか。私の知らない、そしてこれからも知ることのない人たち、その人たちの血やリンパ液や遺伝子を私は知りたかったのだ。私は自分の過去から切り離されることに耐えられなかった。自分の過去をこぶのように背負って、乾季になったら浸かってみたいという願望があった。
「時間の風に乗れ」とサムは言った。
私は彼の話を聞いていた。そうして私はタイムトラベルの仕事に就いたのです。
今、私はその道を進んでいる。過ぎ去った千年の間に、私を待つ人たちを見た。私の過去がこぶのように私を抱きしめている。
プルケリア!?
曾祖母!曾祖母?
もし私たちが会わなければ...
お菓子やスパイスの店に行かなかったら...
黒い瞳とオリーブ色の肌と高い胸が、私にとって何の意味もなかったら、プルチェリア...
私の愛 私の欲望に満ちた先祖 あなたは夢の中で私を苦しめる あなたは私のために歌う。

 

Weblio 翻訳
1導師がそうであったサム、黒人と線の上の彼の身内は、slaves―と、それの前に、王だった。
私は、私のものを怪しんだ。
汗まみれの農民の世代(疲れているように死ぬ)?
または共謀者、反乱軍、偉大な誘惑者、剣士、泥棒、裏切り者、ヒモ、公爵、学者、失敗した聖職者、ゲグとトスクの人からのtrans­lators、高級娼婦、使い古した象牙の取扱業者、簡単な料理を作るコック、執事、株式仲買人、コイン-トリマー?
すべてのそれらの人々Iがこれまで知るというわけではありませんでした、そして、決してありません、私が彼らを知っていて欲しかった誰の血とリンパと遺伝子I carry。
私は、私自身の過去から切り離される考えを持って行くことができなかった。
私は背中に丘のような私と過去をまわりにドラッグすることを渇望していた。そして、乾いた季節が来たとき、それに下がった。
「それから、時間-風に乗ってください」、言われたサムは、導師だ。
私は、彼の話を聞いた。
それは、私が時間-旅行ビジネスに入った方法だった。
今は、私は線の上にいた。
私は、通り過ぎられる千年に私を待つ人々に会った。
私の過去は、丘として私を抱きしめる。
プルケリア!
大きな-大きな-マルチ-曾祖母!
我々が決してmet―を持っていなくて黒い目とオリーブ皮膚と高い胸が私にとって何も意味しなかったならば私がお菓子とspices―の店から離れていたならば、Pulcheria―私の愛。
私の淫らな先祖。
あなたは痛みます私の夢の私。
あなたは、線の上のから私に合わせて歌う。

 

お試し翻訳|AI自動翻訳『みらい翻訳』
1
教祖サムは黒人で、彼の部下たちは奴隷だった。それ以前は王たちだった。私のはどうかなと思いました。何世代にもわたる汗だくの農民たち、疲れ果てて死んでいく?あるいは、共謀者、反逆者、大誘惑者、剣士、泥棒、裏切り者、詐欺師、公爵、学者、落伍した司祭、ゲッグとトスクからの逃亡者、遊女、中古象牙の商人、ショートオーダーの料理人、執事、株式仲買人、硬貨切り商人?私が持っている血液やリンパ液や遺伝子を持っている人たちのことを知りたかったのです。私は自分の過去から引き離されることを考えるのに耐えられなかった。乾季になると、背中のこぶのように自分の過去を引きずって、それに浸かっていたいものだ。
「時間の風に乗って」と教祖サムは言った。
私は彼の話を聞いた。そうやってタイムトラベルの世界に入ったのです。
今は列に並んでいます。私は千年の間に私を待っている人々を見てきた。私の過去は私をこぶとして抱きしめてくれる。
プルケリア!
曾曾曾祖母!
もし私たちが会ったことがなければ
もし私がお菓子やスパイスの店から出ていたら
もし黒い目とオリーブの皮と高い胸が私には何の意味もなかったとしたら、プルチェリアは
私の愛。私の好色な先祖よ。あなたは私の夢の中で私を苦しめます。上から歌ってくれ。

 

Bing翻訳
1
教祖サムは黒人男性で、その列をなす彼の民は奴隷であり、それ以前は王たちでした。私は自分のことを不思議に思いました。何世代にもわたる汗をかいた農民が、疲れ果てて死んでいく?それとも、陰謀者、反乱軍、偉大な誘惑者、剣士、泥棒、裏切り者、ポン引き、公爵、学者、失敗した司祭、ゲグとトスクの翻訳者、礼儀正しい人、中古象牙のディーラー、短期料理人、執事、株式仲買人、コイントリマー?私が知らなかったし、これからも決して知らなかった人々、私が運ぶ血液やリンパ液、遺伝子を持つ人々、私は彼らを知りたかったのです。私は自分の過去から切り離されるという考えに耐えられませんでした。私は過去を背中のこぶのように引きずり回し、乾季が来るとそれに浸りたいと思いました。
「じゃあ、時風に乗って」とグルのサムは言った。
わたしは彼の話に耳を傾けました。それが私がタイムトラベルビジネスを始めたきっかけでした。
今、私はラインを上っています。わたしは何千年もの間,わたしを待ってくれる人々を見てきました。私の過去はこぶのように私を抱きしめます。
プルチェリア!
曾曾曾曾祖母!
もし私たちが一度も会わなかったら――
もし私がお菓子やスパイスの店から出ていたら――
もし黒い瞳とオリーブ色の肌と高い胸が、私にとって何の意味もなかったのなら、プルケリアは――
お前。私の欲望に満ちた祖先ストレス。あなたは私の夢の中で私を痛めます。あなたはラインの上から私に歌います。


★ プロフェッショナルな翻訳をふたつ
 ちなみに本作品を見本に選んだのは、大好きな作家だったからというだけでなく、商業出版された二つの翻訳例があったためでもある。
 東京創元社から、1974年に中村保男氏の訳で、2017年に伊藤典夫氏の新訳で刊行されており、以下のとおりとなる。

「時間線を遡って」(訳:中村保男、1974年刊)
   1
 導師サムは黒人で、時間線を遡って、彼の先祖は奴隷であり、それ以前は王様であった。わたしは自分の先祖は何者だったろうかと首をひねったものだ。汗水たらして働き、疲労困憊して死んで行った幾代もの小作農だったのか。それとも、陰謀家、反逆者、したたかな婦女誘惑者、剣士、こそ泥、裏切者、ポン引き、公爵、学者、できそこないの神父、ゲーグ語やトスク語の翻訳者、高等淫売婦、象牙骨董品の商人、即席料理コック、執事、株屋、硬貨変造人といった顔ぶれだったのか。こういった人たちとわたしはまだ一度も知り合ったことがなく、今後も永久にわたしは彼らそのものとなることはあるまい。その血と、リンパ液と、遺伝子とをわたしが体内に宿している彼ら、その彼らをわたしは知りたかった。わたし自身の過去から自分が切り離されているのだという思いにわたしは耐えられなかったのである。自分の過去を、背中の上の瘤のように、行く先々に持ち運んで、乾燥した季節が到来したらそこから養分を吸い取りたいものだとわたし切望していたのだ。
「それなら、時間の風に乗りたまえ」と導師サムは言った。
 わたしはサムの言葉に聞き入った。そうやってわたしは時間旅行の仕事に首を突っ込むようになったのである。
 今では、わたしはもう時間線を遡って先祖めぐりをした経験者である。過ぎ去った数千年間《ミレニア》の中でわたしを待っている人びとと〈再会〉したのだ。今、わたしの過去は背中の瘤のようにわたしを抱きかかえている。
 おお、パルケリアよ!
 わが曾曾多曾祖母よ!
 もしわたしがそなたと出会うことなかりせば――
 もしわたしがあの香料店に足を踏み入れていなければ――
 もし黒い瞳と、オリーヴ色の肌と、突き出た乳房がわたしにとって何でもなかったならば、パルケリアよ――
 わが愛。わが情欲盛んな女先祖。そなたはわたしの夢の中でわたしをうずかせる。時間線を遡った地点からわたしに唄いかけて来る。

 

「時間線をのぼろう」(訳:伊藤典夫、2017年刊)
   1
 導師サムは黒人で、そのむかし彼の祖先は奴隷だった――それより前は王族だった。ぼくの祖先はどうだろうか? 汗水たらしてはたらき、病みおとろえて死んでゆく小百姓の一大家系か? 謀反人か、革命家か、稀代の女たらしか? 剣士、盗賊、売国奴、ポンビキ、君主、学者、破戒僧、ゲグ語とトスク語の通訳、娼婦、骨董商い人、安食堂の料理人、執事、株式仲買人、それとも贋金作りか? そういった祖先のことを、ぼくはなにひとつ知らないし、知る機会もないだろう。だがぼくの体は、その人びとの血やリンパ液や遺伝子をうけついでいるのだ――ぼくは彼らのことを知りたいと思った。過去から切り離されていることに我慢できなかった。過去をラクダのこぶのように背中にせおい、乾いた季節にはそこに潤いを求める、そんな人間になりたかった。
「じゃ、時の風に帆をあげるんだな」と、導師サムはいったものだ。
 ぼくは彼のことばに耳をかたむけた。それが時間旅行ビジネスに首をつっこむきっかけだった。
 そして、ぼくは時間線をのぼってきた。一千年の時の流れのなかで、ぼくを待っていた人びとをまのあたりにしてきた。いまや過去は、こぶとなってぼくの背中にのしかかっている。
 プルケリア!
 ぼくの大大大大大……大おばあさま!
 もし、ぼくらが出会わなかったなら――
 もし、ぼくがあの菓子と香料の店にはいりさえしなかったら――
 もし、黒い瞳とオリーブの肌とふくよかな乳房が、ぼくにとってなんの意味もないものであったなら、プルケリア――
 ぼくの愛しい人。ぼくの淫蕩なご先祖さま。きみは夢のなかで、ぼくを苦しめるのだ。きみは時のかなたから、ぼくに歌いかけるのだ。

   *****

 ついでに言えば、上記の文庫が東京創元社から発行される前に、早川書房S-Fマガジン1970年9月号から12月号まで4回にわたって伊藤典夫氏の翻訳で同作品が連載されているが、これが2017年版とどう違っているのか自分には確認するすべがない。(伊藤さんのことだから、ぜったい翻訳し直してるんだろうとは思う――してないはずないよね)
 バックナンバーを持っている方、国立国会図書館に行ける方、もし確認できたら教えてください。
 なお、新旧ふたつの訳を並べたのは別に中村氏の訳を古臭いと貶めたかったわけではない。当時の時代状況もあるだろうし、ご当人が訳者あとがきで述べているように「わが愛、わが情欲盛んな……」のフレーズは古典的なポルノグラフィの定型文であり、これを訳文にあてるならやや大仰な言い回しになってしまうのは仕方のないことだろう。

 

★ 読んでみた
 翻訳サービスによって得意不得意もあるだろうし、人によって好みもあろうかとは思うが、自分としては現時点では DeepL 翻訳がいちばん読みやすく感じた。
 無料翻訳の文字数制限や人称のゆらぎ、「ですます・であるだ体」の統一などまだまだ問題はあるが、ひとまず文章にはなっているし、おおよそのところは理解できる範囲にあるように思える。

 

 実際に、古いスパイアクション小説とソフトポルノを DeepL 翻訳にかけてみた。
 使用制限にひっかかるため4~5日に分けて翻訳してもらったものを、前記の人称やですます体を脳内変換しながら読んでみたが、とりあえず概要くらいは理解できたような気がしている。
 最も困難であった言葉の壁を乗り越えられる日も、けっして遠くないと思えた。
 欲を言えば、翻訳刊行されなかった未訳の原書をKindle等で買って、「○○氏風のAI翻訳」で読むことができれば最高なんだろうな。
 いつか夢がかないますように。